[コラム] 品質コストマネジメントというツール

「品質の状況」を経営的な観点から測定するツールとして「品質コストマネジメント」というものがあります。

一般に品質を測定する場合、歩留や不良率、手直し率(リワーク率)、不良発生件数などの数値を用いる事が多いと思いますが、品質コストマネジメントにおいては基本的に「¥(円)」や「$(ドル)」などの単位で評価する事が特徴的で、これにより粗利や営業利益など財務諸表上(特に損益計算書(PL))の指標と同じ土俵に乗せる事ができますので、品質に関して会社の利益と連動した議論が可能になります。(当然ですが、2次的な分析においては歩留や不良率などの数値も必要になります)

具体的な方法論として、以下に一番有名なPAF法の概要を説明します。

PAF法とは、Prevention(予防)、Appraisal(評価)、Failure(失敗(不良))の頭文字をとって名付けられたもので、品質にかかわるコストを以下の4つに分類し分析をするものです。

PAF法による品質コストの分類

(1) 予防コスト

Prevention Cost

品質不良を未然に防止するために費やされるコスト
(2) 評価コスト

Appraisal Cost

品質を評価してそのレベルを維持するために要するコスト
(3) 内部失敗コスト

Internal Failure Cost

工程内(市場への出荷前)で発生した不良の対策のためのコスト
(4) 外部失敗コスト

External Failure Cost

市場出荷後に発生した不良の対策のためのコスト

予防コストは、品質マネジメントシステム構築のために要する費用全般となりますが、品質管理、品質教育・訓練などがメインとなります。また、プリセールス時にお客様のところに訪問し、品質に関する説明をするのに要した費用などもこの枠に含めて良いと思います。

次に評価コストですが、これは専ら製品(商品)の評価や検査に要する費用となります。

最後に内部失敗コストと外部失敗コストですが、不良が発生した場所、即ち、内部(工程内)か?外部(市場)か?という意味ではその内容は本質的には同じで、不良調査費用や手直し(リワーク)費用、廃棄処分された費用、対応人件費、旅費交通費などが分類されます。

ただし、金額の多寡や後のビジネスに与えるインパクト、即ち、お客様からの信用を失いビジネスをロストするという意味では両者には大きな相違がある事は注記しておきます。

これらの分類を行った上で、以下のような順序で品質改善を進めていきます。

  • 現状のステータス把握から次に目標とするステータスを設定
  • 各コストの内容分析とそれらの適正値判断
  • (2)の決定に応じた対策策定と活動実施
  • 状況のモニタリング(必要であれば修正を行う)
  • 結果の判断とフィードバック

品質の改善は一朝一夕で成しうるものではありませんが、それでも最大限の効果を得るためには適切な方向付けをする必要がある事は言うまでもありません。

特に内部失敗コスト及び外部失敗コストは、マイナスの利益(=損)以外の何ものでもありませんので、出来る限り0に近づけていくことが望ましいのですが、反面、予防コスト、評価コストに関しては単純に削減すれば良いという訳でもなく、バランスを考慮する必要があり、経営者の手腕に依存します。

最後に「品質コストマネジメント」はあくまでツールですので、導入しただけで品質が改善される訳ではなく、経営者を筆頭にそのツールから得られた情報からどのような意思決定をするのかが最重要である事を申し上げておきたいと思います。

 

 

(文責:有冨智員)